- DV保護命令の申立のカンタンな概要
- DV保護命令申立の対象となる暴力の程度
- 内縁関係/同居関係の場合に申立で必要な書類
- DV保護命令申立の流れ
- DV保護命令申立の際の注意事項
TOC
DV保護命令の申立とは?
DV保護命令の申立とは、以下の5つの命令を有効にしてもらうために裁判所に申し立てを行う手続きのことです。年間約3000件が申し立てられているとのこと。違反すると1年以下の懲役又は100万円以下の罰金が科せられます。
1の申し立てを行う本人に対する接近禁止命令の申し立てが基本となり、これに付随して必要な命令をオプションで申立ます。
(つまり、例えば3の子どもに対する接近禁止のみ、或いは退去命令のみの申し立てはできません)
- 接近禁止命令
(申立本人に対する6か月の接近禁止) - 電話等禁止命令
(メールを含む電話を6か月禁止) - 子への接近禁止命令
(保育園・学校を含め未成年の子への6か月の接近禁止) - 親族等への接近禁止命令
(実家・親族・成年の子の自宅と職場への接近禁止) - 退去命令
(自宅の荷物持ち出しの為に相手方を2か月以内の期間で退去させる命令)
モラハラでも保護命令は申立できる?
DV保護命令の申し立ては「暴力等を受け、今後、配偶者からの(更なる)身体に対する暴力によりその生命身体に危害を受けるおそれが大きいとき」保護命令が申立できます。
身体に対する暴力を受けたこと又は生命身体に対して害を加える旨の脅迫を受けたことがあり,今後(身体に対する暴力を受けた後に離婚した場合又は内縁関係を解消した場合も含みます。),配偶者からの更なる身体に対する暴力により,その生命身体に重大な危害を受けるおそれが大きい場合
裁判所HPより引用
結婚してなくても申し立てできる?

結婚していなくても申し立てできます。結婚していないと、保護命令を出してもらえないと思っている方もいるかもしれませんが、裁判所のページには、DV保護命令の申し立てができる対象者を以下のように定義しています。
生活の本拠を共にする婚姻関係における共同生活に類する共同生活を営む交際の関係」
難しいですが、つまり、同居していれば申し立てできる余地があるということです。
ただし、この『同居状態』を証明するには次のような書類で客観的に証明する必要があります。
- 同一住所が確認できる住民票(同一世帯でなくてもok)
- 『賃借人』と『同居人』として名前が共に記載されている家の賃貸契約書
- 公共料金の支払いを共に負担していること(ガスは彼氏の支払い、電気は彼女の支払い、などの状況)
DV保護命令申立はどうやってやるの?
DV保護命令の申立は、
①自分で申立手続きをやる、
②配偶者暴力支援センター(婦人相談所)で申立を手伝ってもらう、
③弁護士さんに依頼する、の方法があります。
(シェルター又は母子生活支援施設へ入所しているなら、職員さんが1~10までフルフォローしてくれます。)
母子生活支援施設について知りたい方はこちら
法テラスの要件を満たす場合、1事案3回まで弁護士さんの無料相談も利用できます。
利用の場合は、電話で面談予約の際に「法テラスを利用したい」旨申し出れば、所得制限の確認など教えてくれます。
子ども3人の私の場合は、手取りが29万9000円未満かつ資産が300万円未満であれば法テラス利用で無料相談が利用できました。ありがたいです。
なお、事案が異なれば各3回相談が利用できます。1人3回ではないですよ。
DV保護命令申立の流れ

詳しい手続きについては、裁判所のホームページにて各裁判所毎に記載があります。PDFで保護命令申立書もダウンロード可能です。
一回(一時期)の暴力事案に対して保護命令は基本的に一回だけ有効です。
【注意事項】
- 身体に危害が及ぶ事案発生から空白期間があると申立できない!
例:R1年1月夫が体を殴って別居開始。 R3年1月 改めて養育費を求める為に養育費請求調停の申立てをしようとしたが、夫が逆上しないか心配でDV保護命令を申立てしたい
➤これはR1年~R3年まで加害の事実がない期間が存在するので、「心配」という不安要素だけでは保護命令は出してもらえない。 - 加害者が暴力を否定した場合、保護命令が認められない場合がある。
客観的証拠に欠ける「殺してやる」などの脅し文句だけの場合で、加害者が完全に否定した場合、保護命令が認めてもらえないことがある。 - 1回目の保護命令申立受理後6か月の間被害がなければ、不安要素だけでは保護命令の延長は認められない。
6か月の保護命令有効期間中に「6か月後に覚えておけよ」などと脅しがあったり、接近禁止が破られている事実があれば延長できます。 - 客観的証拠がなくて、保護命令が却下されるなら保護命令申立は取り下げた方が良い!
離婚前の人の場合で、DVを理由に面会交流を拒否したり、DVを理由に慰謝料請求したいと考えている場合:保護命令が却下された事実が残ると裁判所が認めなかったDVを根拠とした各種請求を認めてもらうのが難しくなる。